2019年6月28日金曜日

日本の政治家を2つに分けるとすれば・・・

長島昭久さんが自民党に入党された。また、細野豪志さんも自民党への入党を目指しておられます。これを機に、日本の政治について思うところを記したいと思います。

私はかねがね日本の政治家を2つのグループに分けるとすると、それは右翼と左翼に分けるのではなく、「現実主義」と「空想主義」に分けることの方が適当だと考えています。「空想主義」はかつては「理想主義」だったのですが、その理想について多くの人が「実現する可能性もないし、たとえ実現しても人々を幸せにはしない」ということに気が付いて離れていった後も頑なに固執している人たちを称するには「空想主義」の方が適切だと考えるからです。

過去の歴史を遡ると下記のようになると考えています。以下に示す通り、いつの時代でも「とにかく現実的に対処する」という人と「たとえ実現しなくても理想を叫ぶ」という2種類の人たちが常にいるということは、日本人の思考パターンがそうなっているからと考えています。

1.冷戦終結まで
現実主義(とにかく政権の座にいる、資本主義、対米従属、日米安保)
理想主義(たとえ政権が取れなくても理想を叫ぶ、社会主義で平等で格差のない社会、非武装中立、護憲)

この当時は、「社会主義で平等で格差のない社会」も「非武装中立」も「遠い将来には実現される」と考えられていたので、「理想主義」の人たちも「高尚な理想を語る人たち」ということで尊敬されていました。一方、「現実主義」の人たちは「政権を取り続けるためなら汚いこともする人たち」ということで蔑まれていました。

2.冷戦終結から民主党政権崩壊まで
現実主義 自(公)政権以外は政権を担えない派
     2大政党で政権交代は可能派(長島、細野、蓮舫)
空想主義 憲法9条を守れば戦争は起こらない派

社会主義が崩壊して、人々が「実現すべき理想ではない」ということに気が付いてからは、社会主義を掲げていた人たちは「現実主義/2大政党で政権交代は可能派」に転向しました。
この時代では、「2大政党で政権交代」は「いずれは実現できる」と考えられていたので、「現実主義」に属することになります。この結果、「現実主義」は「自公政権以外は政権を担えない派」と「2大政党で政権交代は可能派」の2つの派閥が存在し、「2大政党で政権交代は可能派」が徐々に勢力を伸ばして民主党政権につながったのだと思います。
これに対して、「空想主義」は「憲法9条を守れば戦争は起こらない派」だけが細々と存在していたことになります。
長島さん、細野さん、蓮舫さんは「現実主義/2大政党で政権交代は可能派」のなかで頭角を現してきた政治家ということになります。

3.民主党政権崩壊後
現実主義 自公政権以外は政権を担えない派のみ
空想主義 2大政党で政権交代は可能派
     憲法9条を守れば戦争は起こらない派
    (反原発・自然エネルギーで電力は賄える派も含む)

民主党政権が崩壊して、「2大政党で政権交代は可能」は空想であることが分かったので、「2大政党で政権交代は可能派」は空想主義陣営に属することとなり、現実主義の有権者の支持を失っていきます。
「2大政党で政権交代は可能派」を支持していた現実主義の有権者はさっさと「自公政権以外は政権を担えない派」に転向して、自民党に投票するようになりましたが、「2大政党で政権交代は可能」と叫んでいた政治家は簡単には転向できませんでした。

民主党政権が崩壊して7年が経ち、ようやく民主党政権の中枢にいた現実主義の長島さんや細野さんが転向することを口にできるようになったのだと思っています。また、中田宏さんのような非自民勢力で頑張っていた人も自民党から立候補するようになりました。

一方で、蓮舫さんは国籍問題での不手際から現実主義の有権者からの支持を取り付けられないと判断して、空想主義に転向することを選んだのだと考えています。

「2大政党で政権交代は可能」が空想である理由は、日本では「憲法9条改正反対、原発反対!」と叫べば、2~3割ぐらいの議席が取れるので、「2大政党で政権交代は可能」派の人たちが政権を取ろうと思えば、空想主義の人たちと組まざるを得ないからだと思っています。空想主義の人たちと組んだ状態で現実世界の問題に対処しようとしても、常に空中分解のリスクを抱えていることになるので、腰を据えて問題に対処することができないのだと思います。民主党政権がまさしくこの状態でした。

「2大政党で政権交代は可能」が「現実的」と思われるようになるためには、空想主義の人たちが取る議席が1割以下になって、なおかつ、有権者が「民主党政権の悪夢」を忘れることが必要なので、相当先になると思われます。

私はこの際、かつて民主党にいた現実主義の政治家の皆さん(前原さん、岡田さん、野田さん、安住さん・・・)は、過去のことは水に流して自民党に入ってくれた方が日本のためになると考えていますが、いかがでしょうか?(現実主義という観点ではつながっているのだから・・・)


井上 孝之

プロフィール
かつては、「現実主義/2大政党で政権交代は可能派」に属し、民主党政権崩壊後は「現実主義/自公政権以外は政権を担えない派」に転向した技術系サラリーマン



2019年6月22日土曜日

犯罪者の親の責任について

中村仁さんの「拳銃強奪男の親の責任を考える」を読んで考えさせられました。私にも二人の息子がいます。

私が子供を育てた結論を言えば、「子は親の望んだ通りには育たない」ということになります。特に長男については、ものの考え方が私と対極的な人間になってしまいました。もし、子供が親の望んだ通りに育つのであれば、すべての子供が人格が優れたうえに、高学歴者、医者、スポーツか芸術で秀でた人のどれかになっているはずです。

そして、何より私自身もまた私の親の望んだ通りの人間にはなったかというとそうではありません。このようなことは世の中の多くの人が経験していることだと思います。

子供が親の望んだとおりに育った、あるいは、自分自身が親の望んだとおりの人間になったという人は世の中にどのくらいいるのでしょうか?

多くの人がこのような経験をしているのだから、子供が犯罪者になった場合の親の責任については、「親は子育てを通して、子供の人格形成に最も影響を及ぼすポジションにいたこと自体は事実なのだから、もし、子供が犯罪を犯せば、何の責任もないということもないが、また一方で、子供は親の望んだとおりには育たないことも事実なので、成人した子供が犯罪を犯した場合に、多少の批判は受けることがあるとしても責任ある現在の仕事を辞めるほどの責任を負う必要もない」というあたりが妥当な線のようにも思われますが、いかがでしょうか?

ただし、世論形成の中心となるマスコミは、「著名人や社会的地位の高い人の問題を見つけて、叩けば視聴率(売上げ)が伸びる」という構図のなかにいるので、人を叩く口実が減ることには消極的で、このような考えは受け入れないように思われます。

また、ネットも匿名アカウントで他人を批判することに快楽を感じる人の集合体という側面があるので(スマイリーキクチさんの例もある)、「人を叩かないようにする」という方向に意見が集約することも期待薄です。

今回の事件の父親は、自分がマスコミという「叩く側」にいて、その人間が「叩かれる側」に落ちるとフルボッコになることが分かっていたので、さっさとその地位から去ったようにも思われます。

犯罪者の親の責任について、あるべきところに意見を集約させる解決策として思いつくのは、多くの人が意見を発信してもらって、「意見を言いたい極端な考えの持ち主の意見」を薄めて、常識的なところに意見を集約させていくということを積み重ねていけば、「あるべき責任の取り方」の考え方が収斂していくのではないかと期待しています。

◆私の考える親の責任の取り方
私としては、「仕事は辞めなくていいから、語ってほしい」。どのように子供と接してきたのか、何か異変を感じる兆候はなかったのか、異変を感じたときどのように対応して誰に相談したのか、等々。一つ一つの事例は個別事情でも、集約していくと何か傾向が見えてくるかもしれないし、これから子育てをする人のヒントになるかもしれません。
また、今回の犯人が「心を患っていた」ということであれば、社会からのサポートという観点で何ができるのかの議論のきっかけになることも期待できると考えています。


井上 孝之

プロフィール
「子供の遺伝子の半分は自分と同じなのだから、子供はある程度は自分に似る」という思い込みが完全に間違いであったことにようやく気が付いた技術系サラリーマン

2019年6月18日火曜日

年金問題/スマホの料金体系とNHKの経営問題との共通点

私は4人家族(妻と二人の息子)で、私、妻、二男の3人は格安スマホの3人分パックを使っていて、利用料金は3人分で月に5000円(スマホ本体代金は含まない)です。これに対して、長男はi-Phoneが欲しいと言い張ったので、一人だけ大手キャリアで利用料金は一人で7000円(スマホ本体代金も含む)ぐらいです。

私は物好きなので、2年おきにキャリアを乗り換えの手続き(窓口で2時間ぐらい拘束されて長い説明を聞かされる)も苦にならず、乗換のたびに最新のi-Phoneを手に入れています。契約時に強制的に加入させられるオプションもきっちりと解除しているし、2年後の契約変更のタイミングもしっかりとメモしていますが、このような対応をやる人は世の中にはそうはいないと思います。

このような経験をもとに、「大手通信キャリアはなぜ高収益なのか?」という問いの答えを私なりに出すとすれば、「スマホのような生活必需品の料金体系を複雑にすれば、多くの消費者は思考停止に陥って、不満を抱えていても、高い料金を支払い続けているから」ということになります。
(これから制度変更が行われて、この方法は続けられないかもしれませんが・・・)

このことは年金制度でも同じことが言えると思います。つまり、「制度を複雑にすれば、多くの人は思考停止に陥る」ということです。

そして、このことは多くの人にとって都合がいいということになります。

1.官僚にとって
制度を正しく理解して批判してくる人は少ないので、見当違いな論点で批判してくる人がいても、「制度を正しく理解してから、批判してください」と言えば、批判をかわすことができます。

2.与党政治家にとって
支持者に「真面目に誠実に説明させていただきます」と言って、誠心誠意、難しいことを分かりやすく説明するふりをすれば、たとえ中身が理解されなくても、「よく分からないけど、できる範囲ことはやってくれている」というプラスの印象を与えることができます。
また、制度が分かりにくいということは、誰にとって損なのかがはっきり分からないので、誰からも好かれたい政治家にとっては好都合です。

3.野党政治家にとって
最初っから政権を取るつもりはないので、ピント外れなことを主張しても問題ありません。とにかく頭の悪い有権者を焚き付けて騒動を起こせば、「与党と闘っている」というスタンスをアピールすることができて、与党に投票するつもりがない人の票を固めることができます。

4.マスコミにとって
年金の問題が浮上するたびに、「政府が分かりやすく説明しないから多くの生活者は不安に陥っているのだ」と批判することができます。
また、池上彰さんのような詳しく解説する系の人は半年おきに年金の特集をやっても視聴率が取れます。ほとんどの人は半年前の年金の説明なんか覚えていないからです。

5.自営業者にとって
サラリーマンが支払った保険料を自分たちの年金として受け取ることができます。

6.サラリーマンにとって
本当は一番のカモにされているわけですが、牙を抜かれて戦う気力もありません。そもそも給料天引き分は最初から無かった金だと思っているので、気が付かないうちに給料天引き分が増えていたとしても、腹も立ちません。
「怒れよ、サラリーマン! こんな不理不尽な制度を許していいものか!」と立ち上がったところで、「お前ひとりで頑張れ。しょうもない運動に巻き込むな」と言われるのが関の山です。戦っても勝てない戦いに参加するぐらいなら、「給料天引き分のお金はもともと無かった」と思い込んで、気が付かないふりをした方がマシです。
ちなみに、私もサラリーマンの端くれですが、私にできる最大限の抵抗はアゴラに自分の意見を投稿することと、ふるさと納税を最大限に使うことぐらいです。

7.若者にとって
国民年金保険料を支払わないことが合理的な選択かどうかはともかく、今月の16,410円を支払わない自分を納得させるためには、「どうせ自分が受け取るころには年金は破綻している」という都市伝説を信じていられることが必要です。もし、はっきりと「支払わなければ損」ということが分かってしまうと、強い罪悪感を感じながら生きなければなりません。

8.年金を研究する研究者にとって
研究者にとっての最大の恐怖は問題が解決されえしまうことですが、年金の問題は永遠に解決されないので、年金の研究者として一生食っていけます。

一見すると理不尽に見える仕組みですが、その仕組みがずっと続いているのは、池田信夫さんがNHKの経営問題で指摘したことと同じで、「分解してみると、その仕組みの方が関係者全員にとって得だから」ということになります。

結局、全員にとって都合がいいので、将来に亘って何も変わらないということになります。
もし、変わるタイミングが来るとすると、カモにされているサラリーマンが我慢の限界に達して、「怒れよ、サラリーマン」という呼びかけに応える日ということになると思われますが、そもそもカモにされていることに気が付いていないのだから、その日は相当先に先になると思われます。

井上 孝之

プロフィール
いくらサラリーマンがカモにされているからといって、独立して自営業者になる勇気のない技術系サラリーマン。内藤忍さんや城繁幸さんがうらやましい。

「国葬」は「反対運動マニア」の祭典となる

私は「反対運動マニア」というカテゴリーに分類すべき人たちが世の中に一定数いて、政策の実行に当たってはその行動パターンを把握して対策を講じる必要があると考えていますが、そのような観点で論じている人は見当たりません。 確かに、「これは『反対運動マニア』対策のためにやってます」と...